便秘がそれほど体に悪いわけではない

便秘イコール大腸ガンではない

便秘がなぜよくないのか?

世間では一般的に「便秘はよくない」という風潮があります。もちろん老廃物を体にためておいてよいことはないはずです。 以前TVで、「便秘は悪い」という内容の放送がありました。マウスに発ガン剤を加えた上で、これを便秘させた場合と、そうでない場合を比較したのです。

Ⅹ線で腸の動きを見ると、便秘させたマウスの腸はあまり動きません。食べ物が腸内にたまっています。その数ヶ月後に、マウスには大きな肝臓ガンができていました。つまり、便秘になるとガンを作る物質が長く腸内に存在し、それが吸収されれば肝臓ガンなどに、腸内では大腸ガンなどになるということを示そうとした番組でした。

便秘気味の人は驚いたと思います。一方、繊維成分、つまり食物繊維を摂ると、吸収も分解もされずに腸内に存在し、これが腸を刺激して運動を促進するので、便秘を防げるという意見が出されました。腸の中に吸収されないものが入ると、腸の壁を刺激して、これを外に出そうとするため、便通を促進するのです。反対に消化のよすぎるものを食べると、かえって腸の運動が悪くなり、便秘になってしまいます。

さらに、食物繊維はいわゆる善玉菌の増殖を増やし、これが腸の働きを整え、食物アレルギーを防ぎ、さらにコレステロールの吸収などを抑えるといわれたのです。 1993年に、兵庫医大のグループは40~65歳の男女約400人を無作為に4群に分け、1群は何もせず、2 群は小麦のふすま (外皮の部分)を食物繊維として摂り、3群は乳酸菌製剤を毎日摂取、4群はふすまと乳酸菌製剤を摂らせました。

この研究を4年続けた結果、食物繊維を摂っても乳酸菌製剤を摂っても、ガンの発症には関係ないことが分かったのです。

すでに外国では、食物繊維を摂っても大腸ガンを予防できないという結果がいろいろな論文に示されています。最近の米国の研究では、これまでの研究結果を調べていますが、その参加者は72万人にのぼっています。期間は6年~20年に及んでいますが、この結果でも食物繊維の効果は認められませんでした。

ただ面白いのは、ビタミンの効果や摂取した牛乳、肉の量などを考慮して検討すると、効果が見られたのです。つまり食物繊維そのものには大腸ガンを予防する効果はないのですが、果物、野菜の効果がないかどうかは不明なのです。乳酸菌の摂取は大腸ガンの予防になると考えられていましたが、この効果がないということも意外だととらえられています。しかし、野菜、果物、乳酸菌などは、それ以外の作用で健康によいことが分かっていることも忘れないようにしてください。

では便秘はどうでしょう。国立がんセンターの研究によれば、毎日便通のある人と、1週間に2、3度の便通がある人、1週間に1度くらいしか便通のない人を比べると、大腸ガンの発生率に差がなかったのです。これは次のことを意味します。私たちが普通に食べているものには、それはど発ガン作用のある物質は含まれていないということ。さらに便通がないこと自体は、あまり健康に悪い作用をしないということです。

たしかに便通がないと気持ちが悪いし、お腹が膨らんでくるのもいやです。しかし私たちの小腸、大腸の運動は、緊張したり心配したりすると抑制される仕組みがあります。腸管の運動は交感神経で抑制し、副交感神経で促進されます。交感神経は緊張、不安、心配で活性化され、副交感神経はゆったりした気分で促進されるのです。ですから、便秘はあまり体に悪くないのだと思って生きていれば、かえって便通は促進されるかもしれません。

現代人は、日本人の50%が腸ストレスを感じているということですからストレスの影響を受けやすい腸が快便になるようにこうした健康食品が利用されているのでしょう。

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