甘い物はなぜやめられない
甘い物が悪者にされがちな世の中の風潮ですが脳にとってはどうでしょうか?
甘いものの誘惑になかなか勝てない理由
多くの女性は甘い物が好きです。先日、銀座で女性のハンドバッグの中を見せてもらうという企画を放映しました。すると多くの女性がハンドバッグの中にチョコレートやあめなどの甘い物を持っていたのです。
コンビニエンスストアのデザート類を企画している女性の話を開いたところ、「企画を男性に任せると必ず甘味控えめにするが、これではまったく売れない
ケーキは甘くないと売れないのだ。男性は女心が分かっていない」と言っていました。では私たちはなぜ甘い物を好むのでしょうか?これは人の持っている本能でしょうか?
生まれたばかりのラットの口に砂糖水を入れると、ラットはすぐに飲み込み、口を突き出してもっと欲しがります。しかしキニンのような苦い水を与えると、舌を突き出していやがり、ゲップをし、悲鳴を上げるのです。
同じことは新生児でも見られます。ラットを箱に入れておきます。この箱の側面にはレバーがあり、これを押すと砂糖水が出てくるようにしておきます。ラットはこのレバーを押して砂糖水が出てくることを知ると、何回もこれを押して砂糖水を飲もうとします。
このようなラットに、ドーパミン神経の受容体の阻害剤を与え、ドーパミンが働かないようにすると、ラットはレバーを押そうとしなくなります。砂糖を与えると側座核という部分からのドーパミンの放出量は急増します。これは砂糖のみならず、脂肪酸ヤアミノ酸でも見られますが、ドーパミン神経を死滅させてしまうと、当然このような反応は起こらないのです。
また、中脳水道周囲核というところにある、脳内麻薬で有名なβエンドルフィンを出す細胞も、甘い物を口にするときに活性化されます。このように、ドーパミン神経やエンドルフィン神経はおいしいものを食べつかさどようとする意欲を司ります。しかし、この神経を薬で阻害したラットの口に砂糖水を与えても、ラットはすぐに飲んでもっと欲しがるそぶりを見せました。
さらにラットの大脳を除去しても、ヒトの無脳児でも、このような反応が見られることが分かりました。
つまり、私たちが考えたり、快感を感じる役割を持つ大脳がなくても、私たちは本能的に甘い物、脂肪、タンパクの分解産物のアミノ酸を好むことが分かったのです。このことから分かるのは、砂糖に代表される炭水化物は生存に絶対に必要な栄養素であるため、体は無意識にこれを好み、確保しょうとしていることです。
これは脂肪、アミノ酸についても同じです。3大栄養素である炭水化物、脂肪、タンパク質を確保するため、このような反応が進化したと考えられます。このように、私たちの脳は、意識しなくても甘い物、脂肪分のあるもの、アミノ酸のある食べ物を好むようになっているのです。
うま味調味料の成分であるグルタミン酸は、タンパクの構成分です。これを加えると食べ物がおいしく感じるのは、必ずタンパク質を食べたくなるという気持ちが本能的にあるからです。甘い物、霜降りの肉(脂肪を含む肉) を私たちが好むのは、私たちの祖先が動物だったころから始まっているのです。