脳はグルメ、肉や卵が好き

脳が欲する食事

脳はグルメ、肉や卵が好き

アラキドン酸は、乳幼児の脳の発達によいだけではなく、高齢者の脳にも不可欠だということが分かってきました。

アラキドン酸は、脳の脂質中に非常に多いのですが、アルツハイマー病のときには減ります。また皮膚にも多いのですが、アトピーの人は減っています。 最近では、高齢者の脳機能にアラキドン酸が必要だということが示され、ラットを使って場所の記憶について調べられました。

ラットを墨汁で不透明にした水槽に入れます。その1ヶ所で水の下に板を置いておき、ラットがここに到着するとその上に乗って休むことができるようにしておきます。しかし、水が不透明なので、泳ぎながらそこを見ることはできません。位置を記憶しておく必要があるのです。

ラットを水槽に入れると、偶然その板を見つけ、休息します。その次にラットを水槽に入れると、ラットはしばらくいろいろなところを泳いでいますが、そのうちに板の場所を見つけ、その上で休みます。この軌跡、つまり板を見つけるまでにかかった時間を調べます。これを繰り返すとラットは慣れてきて、比較的早く板を見つけるようになるのです。

ところが高齢のラットをこの実験で使うと、ラットはなかなか板を見つけられません。時間がかかります。しかし高齢のラットにアラキドン酸を与えると、板を見つける時間が短くなります。つまり、記憶がよくなるのです。

このような位置の記憶を司るのは海馬と呼ばれるところです。海馬は、記憶している時間の短い短期の記憶を、長期的な記憶にする場所としても知られていますが、場所の記憶を司るところでもあるのです。海馬がやられてしはいかいまうと方向音痴になります。

またアルツハイマー病の患者などが彿梱するのは、海馬が侵されやすいからです。この実験結果は、アラキドン酸が海馬の細胞を活性化することを示しています。海馬が衰えると固有名詞が出てきません。「この間、あそこのあの人にあった」など、「あれ」「これ」といった代名詞が多くなってしまうのは、海馬が衰えているからです。ただし最近、海馬の細胞は何歳になっても増殖し、増えることが分かってきました。アラキドン酸は海馬の細胞を増やす役割をしているのかもしれません。

他にも、アラキドン酸は、集中力や決断力を高める作用があります。例えば車に乗っていて、信号が黄色になったときにすぐにブレーキを踏むかどうか、その時間はどのくらいかかるかと判断する場面があるとします。この判断が瞬時にできないと、ブレーキが踏めず、事故につながってしまうでしょう。

アラキドン酸を与えて、瞬時の反応を見ると、その反応性が早まっていることが分かりました。つまり集中力を増す作用があるのです。

集中力や決断力などは、前頭前野の役割です。前頭前野は、私たちが人間であり、理性を持っているために必要な場所です。この機能が高まるというのは非常にうれしいことだといえるでしょう。 最近では、肥満を起こす、動脈硬化を引き起こす、あるいはガンになるなどといって肉や卵を食べることを敬遠する向きもありますが、これは間違いです。脳にとっては、アラキドン酸のように肉や卵に含まれる成分が必要不可欠です。

これまでの研究では、肉や卵を食べて心筋梗塞が多くなるとか糖尿病が多くなるとかいった結果は得られていません。脳はグルメだということを忘れないでください。

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