働く人の心

軽いうつ病を重症化させないためには

希死念慮

回復期にはリハビリが必要

精神的負担に押しつぶされそうになる

日本では1998年以降、毎年の自殺者が3万人を超える緊急事態です。そして自殺者の7割もの人が「うつ状態」でした。うつ状態にならないための予防は、「軽症うつ状態」になったら相談し、うつ状態にならないような対策を練ること、「中等度以上のうつ状態」になったらきちんとした治療を受けることが大切です。また、回復期にはリハビリテーションが大切です。なぜなら回復期には「希死念慮」が起きやすいからです。

どうして希死念慮が起こるのでしょうか? 健康な人には、「楽しいなぁ」という感覚や「楽でよかった」「生きていてよかった」という快適な感じの「健康感」という感覚があります。しかし、うつ状態になると毎日が、苦悩の重圧や窮屈な感じに押しっぶされそうになり、快適な感じの「健康感」がなくなってしまいます。うつ状態の入り口のときには、非常につらく筆舌に尽くしがたい感情に襲われるときがあり、その苦しさから「死」を選ばれる方がいらっしゃいます。逆に回復されてきた時期に、現実の厳しさや将来への不安から死を選ばれる方も少なくありません。こうしたことから発病初期と回復期には、周囲の人が十分に気をつけることが大切なのです。

働く人とうつとの関係で言えば、職場に対する啓発やうつ病への理解の促進が大切です。経営者や人事総務担当者、管理職の方々には「うつ病」はけっして珍しい病気ではないこと、回復したら以前と同じ人であること、さらに言えば苦労を経験した後は人としてより成長していることがよくあることを理解していただきたいと思います。

うつを回復した方が管理職になると、その上司に対する部下の評価はとてもよい場合が多いのです。なぜなら自分の経験から相手を配慮できる管理職になるからです。その意味で「うつ病」を経験することは決してマイナス面だけではありません。

職場には、スーパーマンのようにまったく病気と縁のない人で順風満帆、無敗の人も中にはいらっしゃいますが、そのような上司を持つ部下は、本当に不幸です。人の痛みや苦しみを経験したことのない彼らは、部下の苦しみをまったく理解できないことが多く、精神科医視点でみると、彼らほど残酷に見える人たちはいません。痛みを経験したことのない人が「痛み」をイメージするのほ困難です。相手のつらさ・痛みを配慮できる上司であることが職場のメンタルヘルスではとても大切なのです。

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