うつ病を予防するために

ストレス社会でうつ病になる人が急増中

憂うつな気分とうつ病は違う

憂うつは誰もが経験します

うつ病との違いは

「憂うつな気分」というものは誰もが経験するものです。私たちは、憂うつにならない日がないといってもいいはどでしょう。しかし、こうした通常の気分の沈み込みと違い、「うつ病」になると自分に求められている反応が出せない状態になります。

「うつ病」は、憂うつがひどくなった病気であり、あるストレスが加わることによって現れる、脳のストレス反応です。また、考え方が極度に硬直化する病気のため、思考の柔軟性がなくなり、物事への解釈が1つしか選べなくなります。

外来を受診する患者さんの統計では統合失調症と気分障害(ストレス障害と不安障害を含む)の比率はほぼ同じですが、23万人の入院患者のはとんどが統合失調症です。

国内のうつ病の有病率をみると、人口の3~8% が抑うつ状態を持っています。気分障害で受診する人は約43万人ですが、その中で抗うつ剤を使った「気分障害」の治療を受けている人は29万人しかいません。

ホルモンが影響するため、女性では更年期や妊娠出産年齢など比較的若い年齢層に気分障害が多く、男性では中年から老年期に単極性うつが多いのが特徴です。

うつ病治療の最前線

うつ病の治療は薬物療法が中心ですが、難治性うつ病や慢性化したうつ病には、次のような治療法も行われています。

今後、うつ病の新しい治療法が開発されることで、現在は難治性といわれているタイプのうつ病が治る日がくるのも夢ではありません。

ETC(通電療法・電気痙撃療法)
ETCは、頭部に少量の電流を洗し痙攣を引き起こすことにより「重度のうつ病」「難治性のうつ病」を治療する方法です。以前のETCは映画「カツコーの巣の上で」に描かれたような残酷なイメージや懲罰的なイメージがあり敬遠されていましたが、現在では、麻酔科医と協力し手術室や専用の病室で麻酔をかけ、痙攣発作を起こさない(無けいれん療法・修正型ETC)治療を行います。日本では、自殺の危険が高く焦燥感・不安感の強い「重度のうつ病」や薬物療法の効果がみられない「難治性のうつ病」の治療法として限定的に使用されるのみですが、欧米では、高齢者や妊娠・出産を希望するため薬物療法を控えたい女性、薬物療法の副作用に悩む方などにETCが一般化しています。
方法
  • 静脈麻酔と筋弛緩薬を注射し眠った状態で脳に電流を30~60秒通電する。
  • 血圧・心電図・血液データー・脳波をモニタリングし全身状態に問題がないか専門医がチェックしながら施行する。
  • 週2~3回回のペースで6~12クール実施する。
  • ・麻酔科などの設備のある総合病院・大学病院で行っている。
経頭蓋的磁気刺激(TMS)
TMSは、経頭蓋骨的に磁気で生じる渦電流で大脳皮質を刺激する治療法です。この治療は、痛みを感じることなく麻酔なども必要ありません。ETCに替わりうる可能性を持った新しい治療法です。日本では、健康保険の対象外のため自費診療となります。
方法
  • 1コース10秒間×5回頭頂部・左右前頭部に磁気パルスを当てる。
  • 1日1~3回のペースで(隔日の場合もあり)2週間行う。
光療法(ライトセラピー)
特定の季節に反復してうつ状態を示す「季節性うつ病」に有効な治療です。冬季に日照時間の少ない北欧や北米で行われています。2500〜1万ルクス(通常の室内の明るさは100〜400ルクス)の人口光の装置(電気スタンドのような装置)で光を照射します。照射中は音楽を聴いたり読書や編み物をしながら一分に数秒程度光源を直視します。閉限や入眠しないように注意しましょう。
  • 1回の照射時間は、30~120分です。
  • 朝(午前中)または夕方の決まった時間に行います。
  • 7~10日間連続して光療法を行い、光療法が有効であれば、うつ状態の終了時期まで継続して行います。
迷走神経刺激(VNS)
左胸部にべースメーカーのような小型装置を埋め込み、迷走神経に直接小さな電気パルスを送る治療法です。米国のテキサス大学等で試験的に施行しています。ペースメーカー埋め込みのために胸部外科手術が必要です。
  • VNS装置を埋め込みます。
  • 抑うつ気分を感じた時に、手首にあるスイッチを押し左胸部の装置に電気を送り、小さな電気パルスで迷走神経を刺激し気分をコントロールします。
鍼灸・漢方療法
鍼灸療法や漢方薬忙よる治療も行われています。抗うつ剤と漢方薬の併用で胃腸傷害やしびれ感、倦怠感等の副作用が軽減されます。使用される漢方薬は、柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)加味逍遥散(かみしょうようさん)などですが、主治医の指示に従ってください。

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